2019年4月12日金曜日

第14回『「立ち方」について②』

「立ち方について」の続き。

「立ち方」を考える時、「骨」と「筋肉」という2つの身体の要素を分けて考えた方がいい。

初心者にありがちな筋肉の過剰な力で立とうとする(姿勢を作る)のは良くない。筋肉で姿勢を作ろうとするのはそもそも「立ち方」の根本が間違っているから身体のどこかに力みが出てしまって、いい立ち方はもちろんのこと、いいパフォーマンスは出来ない。


「立ち方」の基本は「骨」で立つこと。グレートチュンピオン、ドニーバーンズのパートナーのゲイナーにも「骨で立つ」と教わった。

まずは、筋肉の無駄な力を極力抜くこと。そうすると次第に自分の骨の存在を感じれるようになる。そこからが立ち方のスタートだ。


①足の裏の土踏まずに重心を置く。この時の重心とは体重のことではない。体重はつま先になったり踵になったり変化するが重心は変わらない。重心は常に土踏まずに置くこと。

②土踏まずの上にペルビス(骨盤)を置く。後に「筋肉」でよりアクティブなバランスを作って行くので、ここではあまり細かい事は考えずペルビスの重さを感じられる程度で良い。

③ペルビスの上にリブゲージ(肋骨)を乗せる。

④土踏まず、ペルビス、リブゲージの上に鎖骨と肩、肩甲骨をそれぞれの重さを感じられるようにリラックスして乗せる。


  ①②③④の順に積み木の要領で骨組みを作る、これが「骨」で立つことの基本だ。非常にシンプルで、これくらい知ってる、と思うかもしれないがこのニュートラルな基本が実は一番大切だ。

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そして「骨」でニュートラルなバランスが作れたら、ようやく次に「筋肉」を使ってよりアクティブなバランス(踊れるバランス)を作る。

   

⑤太ももの筋肉を使って足裏から床へ向かってフットプレッシャーをかける。


⑥足裏から床へフットプレッシャーをかけると、逆に床から上方向への反発力が生まれる。この反発力でハムストリングを持ち上げる。(これによってヒップアップする感覚になる)ももの前側は下への力、ももの裏側は上への力が働いている状態になる。


⑦ハムストリングから更に上へ繋げて背中のちょうどみぞおちの裏辺りの部分を上に引き上げる。


⑧肩甲骨はやや横に広げ、鎖骨と肩を上から蓋をするような感覚で下に落とす。ただし過剰に下にやりすぎないこと。


⑤⑥⑦⑧、これで前傾姿勢が作られよりアクティブな踊れる立ち姿勢になる。


特に大切なのは⑥と⑦。


全体的なイメージとしては背中を立てて斜め前方へ伸ばすイメージだ。さらにわかりやすく言うならば大きな扉を背中に背負って立っているような感じ。



よくある間違いだが、自分の身体を大きく見せようと身体の前側を伸ばし顎を上げてしまう。目線が上がり自分では姿勢良く大きく立ってる様に感じるのだがこれは錯覚で実は外からは背中が潰れてしまってむしろ小さく見える。

やや目線を下げ、背中を立てて後頭部から斜め前方に引き上げた方が身体は大きく見えるのだ。


自分の場合はこの立ち方に意識を変えた時にA級に昇級出来たし、表現力、空間の大きさなど踊りの幅も広がった気がする。

「立ち方」を変えるとシルエットが変わるだけでなく、使える筋肉の部位も変わる。動作に入る時の各パーツの始動や連携も変わる。さらに「立ち方」は男女のコネクションにも大きく影響する。


自分は毎日最初にフロアに立つ時、ルンバの立ちポジションを作ってその日の身体の微妙なコンディションの違いを確認している。そして「立ち方」を意識しながらバランスを修正する。


立ち方は日々研究。だから面白い。

『第14回ダンスのキセキ「立ち方について②」』



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2019年4月3日水曜日

第13回『「立ち方」について①』

今回は「立ち方」について。

ダンサーにとって「立ち方」は重要な課題だ。自分も現在の「立ち方」を確立するのに10年以上かかった。大きく変えただけでも3回は変えたし小さなものを含めると数えきれない。

大きく変わった1回目は大学4年生の時だった。その時は特別意識して立ち方を変えようとした訳ではなかったのだが、他大学の学連ファイナリストのライバルOに「坂本さ、立ち方変えたでしょ?」って言われハッとした。

当時、コーチャーのM先生がCDを変えるときのオーディオの前に立っている時の姿、とりわけ丹田の位置がやたらカッコよく見えて密かに研究して真似していたからだ。丹田を引き上げ、丹田の中にある風船を膨らませるイメージでやや丹田に力を入れ腹圧を強める。

ダンスではなく普段の生活で意識してるうちに「立ち方」が変わっていたのだがダンスにもそれが出ていて、後輩が撮ってくれた自分の踊っている動画を見た時にチャチャチャのキューバンブレイクで開く時の腰の運びが力強く素早くなっているのを感じたのを覚えてる。


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「立ち方」を変えた2回目はプロになって34年目の時。この時は自ら「立ち方」を変えた。

当時は朝から夜まで生徒さんのレッスンがびっしり詰まっていて、一番忙しい日なんかはスタジオ営業の前後にそれぞれプロを23組ほどレッスンしていたから朝10時から夜11時まで全く休みナシの13時間連続でレッスンした事もあった。
しかも1レッスン30分のスタジオだったから(最近では1レッスン25分のスタジオがほとんどだが)前のレッスンと次のレッスンの間に全く合間がなかった。むしろレッスンが終わってチケットを頂いて生徒さんと次のスケジュールの打ち合わせをしたらあっと言う間に23分は経ち、途中お手洗いに行こうものなら56分はすぐ経ってしまうからどんなに頑張っても夜の生徒さんのレッスンは大抵10分から15分推してしまう。

まさに分刻みのスケジュールとはこの事で、当時生徒さんもそれをわかってくれてたからレッスン開始時間の遅れには寛大に接してもらえた。


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さて前置きが長くなってしまったが、そんなハードスケジュールの他にプラスして自分の練習を23時間やる毎日だったから、5メートル歩くのに1分かかるような大きなギックリ腰を何回かやった。ギックリ腰をやる時は大抵、前日は深夜12時くらいまで絶好調に練習していて、次の日の朝目が覚めると布団から立ち上がる事が出来ない、という感じだった。


そんなギックリ腰を繰り返していたある日、さすがにこれではいけないと思い「立ち方」を研究した。


自分は反り腰気味だから踊る時どうしても腰に負担がかかりやすかった。ただし反り腰は決して悪い面だけではなく、背中からヒップのラインがキレイに見えるという良い面もある。ダンサーを数多く施術していた整体師の先生Jにも施術中「坂本君は背中のラインがキレイだねー」と良く言われていた。


数日間、背骨の湾曲を研究し色々試した結果、背中のラインは今のラインを維持しつつ第3腰椎辺りから仙骨までをやや後ろ上方へ引き上げるようにした。そうすると腰に芯が入り棚が出来たような感覚になって腰が安定した。大きなギックリ腰もそれ以降はほほとんどなくなった。


「立ち方」は背骨の湾曲と軸の意識が大切なんだと気づいた時期だった。



そして最後に3回目の変化についてだが、これは現在ある程度確立した自分の考える「立ち方」につながっているので次回「立ち方について②」で改めて書こうと思う。


『第13回ダンスのキセキ「立ち方について①」』

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