2016年11月29日火曜日

第2回『社交ダンスと競技ダンス』


いつの頃からかは忘れたが、自分の中で「社交ダンス」と「競技ダンス」を分けて考えるようになった。


自分が思う「社交ダンス」はまさに「社交」を目的としたダンスだ。


適度にホールドを張り、時には世間話でもしながら大きく踊らず音楽に乗って楽しく踊る。


ダンスパーティーでのダンスタイムや欧米人がよくやるホームパーティーでのダンスがそれ。


ちょっと種類は違うがチークダンスなんかもその部類に入るだろう。


対して「競技ダンス」とはまさに「競技」の為のダンス。


可能な限り目一杯ホールドを張り、形を崩さないようにして大きく踊る。


競技会はもちろんデモンストレーションなどもこれに含まれる。他人に見てもらうのが目的のダンスだ。


この「社交ダンス」と「競技ダンス」、やってる事は一緒でも内容は全く違う。


理由は目的が違うからだ。


日本のダンス界は(というか英国のダンス協会は)「競技ダンス」を柱として社交ダンスの普及をしてきた歴史がある。


特に日本では社交ダンスはつい最近まで風営法の下に置かれていたから「競技会」というスポーツ性を全面に押し出す事で風営法から社交ダンスを除外する意図があった。


だから現在日本で広く踊られているのはどちらかと言えば「競技ダンス」式の踊り方だ。


ホールドは常に床と平行に目一杯張り、ダンスタイムの混雑したフロアであっても大きく踊る。


ホールドは肩より下に落としてはいけないと思っている。


ナンセンスだ。


TPOという言葉がある。


近くのスーパーへ行く時に着る服、ちょっと高級なレストランへ行く時に着る服、冠婚葬祭の時に着る服、TPOに合わせて着る服は違う。


社交ダンスにもTPOがあると自分は思う。


本来「社交」の時に踊るダンスと「競技」の時に踊るダンスは違わなければならないのだ。


たまに混雑したフロアで、ホールドを小さくたたんで胸の前に持って行き、小さくステップしながら音楽を奏でるかのようにリズムに乗って踊ってる先生を見ると社交ダンスへの知性を感じると同時にホッとする。


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毎年5月に開催される社交ダンスの世界大会ブラックプールフェスティバルで競技会のラウンドとラウンドの合間にゼネラルダンスタイムというのがある。


競技会の集計をしている間にフロアを解放するダンスタイムなのだが、そこで踊る欧米人のホールドは実にナチュラルだ。


不思議と皆無理のない、程良いホールドで踊る。


ハグなどスキンシップに小さな頃から慣れ親しんでいる欧米人にして見れば心地よいホールドで踊るのは当たり前なのかもしれない。


だが「競技ダンス」式の踊り方が浸透している日本の中にあっては、ホールドを小さくたたんで踊ってると「○○先生は手を抜いてる。」とか「一生懸命踊ってくれなかった。」なんて言われる時があるから大変だ。


だから自分はホールドを落としては踊らない。


そうでなくても、もともと日本人はマジメでなんでもきちんと手を抜かない性格の民族だから、ホールドを落として踊るのは性分に合わないのかもしれない。


そう考えると日本式のダンスも悪い感じはしない。


欧米人の様なホールドをしろとまでは言わない。


このコラムを読んで頂いたダンス愛好家の皆さまが、混雑したフロアで踊る時、パートナーや周りの人たちに不快にならないようなホールドを少しでも意識してもらえたら嬉しい限りである。


(第2回 ダンス雑学コラム ダンスのキセキ)
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